ディスレクシアだから大丈夫!
「ディスレクシアだから大丈夫」は2021年10月に翻訳出版された本のタイトルですが、私がディスレクシアと巡り合ってからずっと思っていたことです。実は2006年に出版し、今でもそこそこ売れているロングセラー「ディスレクシアでも大丈夫」の対語のように考えています。もともとは「だから」を使いたいと思っていました。しかし、当時ではあまりに明るく攻めた感じのタイトルを日本の読者は好まないだろうということで仕方なしに「でも」を使いました。
ディスレクシアに巡り合ってから23年経ち、当初相談に乗った子どもたちは成人してきています。嬉しいことに、忘れたころに「あの時の一言で今の私がいます」とご挨拶に来てくれる親子が何組もいます。その一言は何かというと「ディスレクシアだから大丈夫」です。
日々保護者からご相談を受けますが、多少乱暴に聞こえるかもしれないけれど、印刷物から文字を音に変える読みの訓練や手書きの学習から一時離れて、お子さんが本当にやりたいこと、興味のあることを学習への切り口にすることを勧めしています。そうすることで、学習意欲が高まり、心身ともに健康になり、結果として本来の力を発揮して自分なりの進路を決めていきます。
成人したディスレクシアのある人たちから学ぶ
エッジでは成人当事者会の老舗であるDX会があります。気が付くと隔月に一回まったりとお散歩をしたりして100回を超えました。ディスレクシアで読み書きの困難さがあるというのが共通項なので、それをネタに笑いあったり、工夫を分かち合ったりするのですが、会のルールもゆるく、ホッとできる場が長続きする秘訣でしょう。
もう一つ、今年に入って本格稼働したのがNODEです。結び目という意味ですが、自分たちから発信をしようという意欲のある若者が集まって、自分たちの経験を語ったり、子どもたちに自分たちのことを話したり、相談に乗ったりしようとしています。ホームページのエッジな人たちで紹介している仲間たちです。
この夏も教育委員会や学校などからの依頼でディスレクシアの理解と支援についてお話をさせていただいていますが、彼らディスレクシアのある人たちから教えてもらった、 成功している成人ディスレクシアの共通点についてお話をしています。誰にでも必要なことなのでしょうが、下記の7点が備わっていることが多いようです。
- 読み書き以外の能力で勝負をしている:エッセイイストとか小説家もいますが、事務作業で勝負する人はあまりいません
- 幼い時からの「好き」を保っている:とても大切で、そのおかげで研究者になったり、刀鍛冶になったり、建築家になったりすることができますし、多少ワクワクしない仕事でも趣味としてあればそのために頑張れます
- 自分を認めてくれた人が一人いる:保護者とか教員の場合が多いですが、近所のおじさんという場合もあります。
- 自分のことが分かっている:自分の弱みも読み書きだと本当にコンプレックスになってしまうことが多いですが、どうやったら学べるか、自分の強みも知っていると事態を乗り切ることができます
- 自分の不得意をどうカバーするか知っている:不得意はあって構わないのです。音で聞いた方がいいのか、ICTを使えば大丈夫なのか知っているのは強いです。
- 困ったときにヘルプサインが出せる:助けを求められるのは強いしるしです。何もかも他力はちょっと困るかもしれませんが、潔くHELPサインを出せると生きやすいです。
- レジリエンス(へこたれない力)がある:小さな失敗はいっぱいしていいと思います。大切なのはそのあとどうするかです。一緒に考えて本人が出す解決方法は必ず本人の力になっていきます。
本人も周りの人たちもこのことを頭に入れて実践すれば、成功間違えなしと思えます。
あきらめないで「ディスレクシアだから大丈夫!」